一言の責任を追及され大臣が辞職した。
同様の出来事は過去にもあった。
なぜ人は同じ過ちを繰り返すのだろうか。
人間が繰り返してしまう過ちへの対処を考えることは、善い生き方を考えることにもつながっていく。
たった一言で人生が変わる
たった一言が人生を変える。
それは良い意味でも、悪い意味でもそうだ。
言葉は強い力を持つ。私たちの背中を押してくれることもあれば、言葉が私たちの足枷となることもある。
「口は災いのもと」ということわざがあるように、人は古くから言葉に苦しめられてきた。
だが、人は言葉なくして生きることはできない。
言葉とどのように付き合えばいいのだろうか。
それについて先人たちが答えを残してくれている。
十善戒|言葉の行い
十善戒は人生の中で心がけるべき10の項目として仏教で教えられるものである。
その10項目は大きく分けて3つに分類される。
その1つに「口(く)」言葉の行いがある。
- 不妄語(ふもうご)嘘をつかず正直に話す。
- 不綺語(ふきご)よく考えて話す。無駄話をしない。
- 不悪口(ふあっく)粗暴な言葉を使わない。
- 不両舌(ふりょうぜつ)筋の通らないことを言わない。仲違いさせるようなことを言わない。
これら十善戒の教えと同様のものが、八正道という悟りに至るための生活態度の中にも存在している。
仏教は私たち人間が容易に言葉で苦しむことを発見して、それに対する解決策を示している。
何かを話すことは難しい。しかし、正しい発言の指針はある。
職を奪われた政治家をはじめ、これまで言葉によって表舞台から転落した著名人を思い返すと、これらの「言葉の行い」を守れなかったことが原因だったことが分かるだろう。
発言に気づきを
これを発言したらどのような影響が生じるだろうか。
また、何かを発言するとき、自分の心の中にどのような欲求が秘められているか。
それは自分のためだけの発言ではないか。
常にそれを意識するのは難しいかもしれない。
それでも、自分の発言に対して、少しでも気づきを向けることで、「正しい言葉」を使う人生に繋がっていくだろう。
相手を思うとためらいが出る
相手のことを考えると発言にはためらいが生じる。
相手のことを完全に理解することはできない、何が相手のためになるのか、様々思いを巡らせるとすぐには言葉が出てこないことも多々あるのではないだろうか。
発言するときに生じるためらいは悪いことではない。
それによって相手を傷つけたり、関係性を悪化させる言葉や無駄話はしなくなる。
大切な言葉ほど、一呼吸おいて思いを巡らせてから発言する。
それは「正しい言葉」に通じるものである。
言葉は時を超える
記憶の中で印象に残る言葉というものを誰もが持っているだろう。
言葉は人々の記憶に残り、力になってくれることもあれば、それがトラウマ的な記憶を形成することもある。
そして、今はネットやSNSで様々な言葉を簡単に残せるようになった。
記録上の言葉をたどって、過去の発言が今に影響を与えることもある。
言葉の影響は時を超える。
現代はそれがさらに顕著になっている時代だからこそ、私たちは「正しい言葉」を心がけなければならない。
言葉は人をつなぐ、心を照らす
私たち心理士は、言葉を使う職業だ。
それは人と人とをつなぎ、これまで意識されていなかったものに光を当てる役目を担う。
そこで用いる言葉に、配慮が必要なのは言うまでもない。
発言の影響や秘められた欲求に気づきを向け、「正しい言葉」を使う。
それは自分自身だけでなく周囲の人たちの善い人生を支えるための力にもなりえる。


