前回の記事では私が1000フォロワーを達成した方法を実体験と共に紹介した。
今回は心理士がフォロワーを集める意味についてすこし考えたい。
この記事は主にこれから心理職を目指す人や心理士として駆け出しの人に向けて書いているが、一般の方の日常生活にも読んでもらいたい内容となっている。
なぜなら、心理士とフォロワーについて述べることは、心の健康にも繋がっていくからだ。
心理士とX
ここでのXとは「X Japan」でも「私失敗しないんで」のXでも「プロジェクトX」でもない。X(旧Twitter)のことだ。
私は心理士としての肩書を背負ったままXで活動をしている。
そこでは心理士ならではの活動の制限が存在し、なんでも自由に発信というわけにもいかない。
その制限があるため、プライベートなことをなんでも書くということができない。それはなぜか。
私の発信をクライアントが見た場合、そこにもし私のプライベートなことが綴られていたら。どのような影響をクライアントに与えるかを考えるからだ。
一般的に心理士は自己開示をしない存在だ。私も基本的にカウンセリング場面では自己開示をしない。
もちろん、全くしないというわけではないが、一般的な人間関係に比べたら、その自己開示量は圧倒的に少ないだろう。
それが、心理士が行うカウンセリング、セラピーというものの特徴で、一般的な人間関係ではない「非現実」の空間、時間を提供するということに繋がる。
私たちはこの「非現実」の中でケアを行っている。そのバランスが崩れると、セラピーは機能しなくなる。
そのため、私たちの「現実」のプライベートの部分というのはある程度秘密にしているということなのだ。
何を発信するのか
それでは私は心理士として何を発信しているのだろうか。
私のポストを見てもらうと分かると思うが、私は自分の仕事に関連したことや心理学的なことを中心にポストしている。時折、「フォロワーが○○人になった」や「ホームページ作り」の話が入るが、それも私にとっては仕事の一部である。
そうなるとほとんどが仕事に関するポストであるといえる。
X内での交流を行うこともあるのだが、そこでの発言も心理士という軸がブレることはない。
私はあくまでも公認心理師・臨床心理士として求められていることをXで発信しているということになる。
心理士に求められる発信とは
心理士としてどのような発信が求められているのか。
それは、公認心理師法にヒントがある。
公認心理師には法律で定められた職責がある。
その内容は以下の通りだ
公認心理師法第一章第二条
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
この記述のうち、一は目の前に対象となる特定の相手がいることを前提としている。二と三も特定の相手がいることでは同じではあるが、ここでの援助は必ずしも直接行うことに限定されたものではないと私は解釈している。
たとえば、私が何か心理的に支援を要する者に有用な発信をXで行ったとする。そして、支援を必要としている人がそれを見たことで何かしらの助けを得たら、それは援助となっている。
そのため、心理士がXで発信することの一つは、支援を必要としている人やその関係者に役立つことばや暖かくサポートをする内容となる。
そして、もうひとつ重要なのが、四の心の健康に関する知識の普及に関する発信である。
この対象は不特定多数になり得る。まさしくXのようなSNSに適しているといえる。
これこそ、私がXで広く発信したいと思っている内容でもある。
そして、この心の健康を広めるというものは、法律によって規定されているものでもあるのだ。
こうしてみると、心理士という肩書でSNSで発信を行うときの指針も自ずと見えてくる。
私たちは、国に認められた専門職である。だからこそ、こうした軸を忘れてはならない。
心理士がフォロワーを集めるということ
私はXをやるにあたって、フォロワーの数というものを意識している。
それは、前述の「心の健康」を広めていくという使命にも関連している。
フォロワーが増えれば単純にたくさんの人の目に触れるチャンスが増える。
そして質の高い発信をしていけば、心の健康をたくさんの人に広めていくことが可能となる。
私は心理士としての軸を持ってフォロワー獲得をするということは、とても大切なことであると思いながら、Xでの発信を行っている。
フォロワー集めはSNS以外でも大切
Xでのフォロワー集めをしているときに、ふと総合病院勤務時代のことを思い出した。
私は心理士が一人しかいない病院に数年勤務していた。そこでは、まさにフォロワーをいかに増やすかということが大切だった。
着任時、そこはまだまだ心理士への相談が定着していない病院であった。引継ぎケースはあったものの数はわずか。前の心理士は何をしていたのだろうと不思議になるくらい暇だった。
「私は心理士として何か貢献するためにここにいるのだ」そのような使命を感じ、様々な営業を行った。
前任者があまり参加していなかった医療チームや委員会にも積極的に参加。各部署に心理士の役割やできることをアピールしていった。院内にポスターを張ってもらった。他職種とも積極的に交流した。
徐々に心理支援が定着しはじめ、半年も経つ頃にはスケジュールがほぼ一杯になった。
もともとニーズのあった現場だったということもあると思う。そのニーズに応えていき、フォロワーを獲得することで、各部署の信頼に繋がり仕事が圧倒的にやりやすくなった。
これは他の現場に行ってからも同じだった。それぞれの現場で求められているニーズを把握し、そこに対応することでフォロワーを増やしていく。
時には普通の心理士が見たら驚くような事務作業や雑務もこなす。それはその場のフォロワーを増やすためだ。賛否両論あるかもしれないが、私は現場に本当に必要とされる心理士は、現場のニーズに応える心理士だと思っている。現場のニーズに応え、フォロワーを得ていくと、そのフォロワー経由でケースを紹介してもらえることが増える。心理士の使命が心の支援をすること、心の健康を広めることであるならば、そういったケースを紹介してもらえるつながりを作るということは非常に大切ではないだろうか。
この考え方は一般企業で働く人にも言えることだろう。むしろ、一般の人の方がここは理解してくれやすいと思う。その場のニーズに応え、売れる自分になる。そうしてフォロワーが増えることは、仕事の量や質にも良い影響を与える。
無理をしない|結果は予測できない
相手のニーズに沿ってフォロワーを増やすことは大切だ。だが、それがいつも上手くいくとは限らない。
だからこそ、まずは自分が無理をしないことが大切だ。
自分が無理をしてまで誰かのために尽くしていたら、いつか自分が潰れてしまう。それでは元も子もない。
自分が無理をしない中で、全力でやってみる。やれるだけの工夫をしてみる。ただ、どれだけやっても結果は予測できない。
私はどの記事も心を込めて書いているが、自信がある記事があるのも事実。だが、実際はそれがあまり伸びなかったということはこれまでも経験している。
その結果にいちいち左右されていたら、自分の心が持たない。
ああ、今はまだ社会のニーズが無かったんだなと諦めて前を向く。
自信があるものすべてが当たるなんていうことはあり得ない。
そして当たるものというのは予測ができないということは、多くの先人たちも同じことを言っている。
名著「仕事は楽しいかね?」(デイル・ドーデン著 野津智子訳)でも「チャレンジは10回中8回は失敗に終わる」が「試し続け変化し続けることで成功の2回を引き当てられる」ことが書かれている。
失敗を引きずらず挑戦し続ける。それこそが、人生においても大切なことである。
やるだけやったのなら結果は気にしない
私の好きな曲に奥田民生の「マシマロ」がある。
奥田民生本人はこの曲の歌詞について、あまり深い意味は無いと言っているが、私自身はこの歌詞がとても気に入っている。
それは「気にしない」精神を貫いていることだ。
雨が降っても、電車が遅れても、笑われても気にしない。
そんな生き方は執着を離れたマインドフルネスにも通じるものを感じる。
マシマロは奥田民生を代表する1曲でもあるのだが、本人はこのマシマロについて、当初ここまで反響があるとは思っていなかったという。ここでも、当たりは予想外にやってくるという現実があることが分かる。
セラピー外の予想外の出来事がセラピーを好転させるという経験を私もしたことがある。だからこそ、やれるだけやったらあとは気にしないという精神は、心理士としても大切であるように思う。
もちろん、心理の専門職として、介入の結果を気にしないというのは無責任でもあるのだが、どうにもできないこともあるというのも事実である。そういう事態に不必要に動揺をしないという心構えは、心理士だけでなく、多くの人にとっても必要なものとなるだろう。
まとめ
心理士としてのSNSでの発信について考えていたら、人生における心構えまで膨らんでしまったが、それだけ、全力でこの発信を行っているということでもある。
フォロワーは心理士が仕事をするうえでとても大切になる。それはSNSのフォロワーにとどまらず、現実世界のフォロワーについても同じである。
ここで書いている記事は、本当はたくさんの人の目に届いてほしい。だが、そこはどうすることもできない部分でもある。
だからこそ楽な気持ちで、目の前のことに全力を傾けていくことが大切であるといえるだろう。
SNSでのフォロワー集めから、心理士として、そして人生の教訓を学ぶことができたのだった。
参考文献
仕事は楽しいかね? デイル・ドーデン著 野津智子訳 きこ書房
奥田民生が「マシマロ」を深掘り-『FUKA/BORI』SIDE A 全編書き起こし – THE FIRST TIMES
https://www.thefirsttimes.jp/column/0000089566/
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