この記事の要約
マインドフルネスが仕事の生産性を向上させる理由
1.雑念に振り回されなくなる
・雑念に気づき、それにとらわれず「Beingモード」に切り替えられることで、集中力が向上する。
2.今この瞬間に集中する
・雑念を手放し、目の前の事象に全力で取り組む力が養われる。
3.本当に価値のあるものを見極められる
・現実を客観的に認識し、価値ある選択や行動ができるようになる。
4.人生の時間を増やす
・雑念に気づくことで無駄を省き、時間の使い方をより意識的に改善できる。
5.心身の健康を高める
・心身の不調に早く気づき、バーンアウトを予防することで持続可能な生産性を実現。
6.安心感を得られる
・どんな状況でも「戻る場所」がある感覚が安心感を生み、積極的なチャレンジを支える。
7.失敗に優しくなる
・セルフ・コンパッション(自分への優しさ)が育まれ、失敗にとらわれず前進できる。
マインドフルネスの効果
・生産性向上に加え、価値のある選択や心の健康、失敗への柔軟性もサポート。
・持続的な働き方やチャレンジ精神の基盤となる。
マインドフルネスは仕事の生産性を上げる。
それは周知の事実で、だからこそ多くの企業でマインドフルネスが取り入れられ、瞑想室を導入する企業やマインドフルネスに関する研修を実施する企業が増えている。
そこにはマインドフルネスの商業化、商品化といった批判はあるものの(池埜2021)、これだけ世間に広まるということは、それだけの効果が実感されているからともいえるだろう。
それでは、マインドフルネスが仕事の生産性に与える効果にはどのような背景があるのだろうか。
雑念に振り回されなくなる
マインドフルネスは「今この瞬間に価値判断をせず意図的に注意を向ける」実践である。
この実践を通して、私たちは様々な雑念が常に湧いては消えているという気づきを得ることができる。
そして、その雑念に心がとらわれているという気づきを得ることもできる(この雑念にとらわれている状態をDoingモードという)。
マインドフルネスの実践を通して、その気づきを得ることができると、その雑念は自分ではコントロール不能なものであることに気づくことができ、それと無理に戦わなくなる(この雑念を手放している状態をBeingモードという)。
それは雑念に振り回されない生き方に繋がっていく。
マインドフルネスが生産性の向上に寄与する大きな理由として、この雑念に振り回されないという点が挙げられる。
今この瞬間に集中する
雑念に振り回されず、今この瞬間に集中する。
そうすることによって私たちは目の前の事象に全力で取り組むことができる。
様々な雑念や思考は襲ってくる。それでも今この瞬間に何度でも戻る。
そうすることによって、今この瞬間に存在する力は確実に高まっていく。
今この瞬間に存在できるようになると、仕事の生産性は自ずと上がっていく。
本当に価値のあるものを見極められる
Shapiro et al. (2006)はマインドフルネスの実践を通して、現実を認識する客観的な視点を獲得することは、本当に価値のあるものを選択する能力の向上に寄与すると述べている。
また、マインドフルネスを取り入れた心理療法の一つであるACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)でも、マインドフルネスによって、とらわれなく今この瞬間に存在することと、本当に価値のある行動を起こしていくことの2本柱を重視している。
マインドフルネスの実践によって現実を正しく認識することは、人生において大切なものの取捨選択に繋がり、その後の目標設定や行動にも良い影響を与えることで、仕事の生産性を高めてくれる。
人生の時間を増やす
マインドフルネスにより雑念にとらわれなくなることで、人生の時間を増やすことができる。
マインドフルネスの実践は、自分の雑念や思考、そして自動的にとっている行動に気づきを持つことに繋がる。
その気づきは、自分が何気なく浪費している時間への気づきにもなっていく。
自分がいかに時間を無駄に浪費していたかに気が付くと、その時間をもっと有意義に使いたいという気持ちが湧いてくる。
結果的に仕事に使える時間を増やすことにも繋がる。
物理的には同じ時間でも、精神的なその時間への存在の仕方を意識することで、生産性は向上していく。
心身の健康を高める
マインドフルネスには心身ともに様々な健康効果があることが数多くの研究で明らかになっている。
心身の健康を保つことは、仕事の生産性を上げるうえでも必要不可欠である。
また、心身の不調にも早期に気づきを持つことにもマインドフルネスは有効である。
そうすることによって、無理をしない態度の形成にも役立ち、バーンアウト(燃え尽き)も予防する。
持続可能な生産性の高い働き方の実現にもマインドフルネスは有効であるといえる。
安心感という強み
マインドフルネスで今この瞬間に戻ることができるという感覚を得られると、どんな状況でも自分の感覚に戻ることができる。
このいつでも戻ることができるという感覚は大きな安心感につながる。
そして、この安心感があると、仕事でのチャレンジにも積極的になれる。
変化を恐れず、不安にも屈しないマインドは挑戦を支える土台となる。
そうした勇気ある行動の積み重ねは、着実に結果に結びついていく。
失敗に優しくなる
マインドフルネスは不完全な自分も受け入れる実践である。
その実践を通して、どんな自分でも受け容れるという、自分に対しての優しさ「セルフ・コンパッション」が育まれていく。
そして、この自分に対しての優しさが育まれていくことで、失敗や欠点にもとらわれずに、前を向く力を得ることができる。
それは、どんな困難も乗り越える力となり、仕事の成果にも良い影響を与えていく。
さらに優しさや思いやりは周囲にも伝播する。
コンパッションに溢れた姿勢は周囲との関係性を良好なものとしてくれる。
仕事で必要となる人間関係にもマインドフルネスは良い影響を与えてくれる。
まとめ
以上、マインドフルネスが仕事の生産性向上に有効な理由を解説してきた。
この記事を書くにあたっては私自身の体験も色濃く反映されている。
私はマインドフルネスの実践を始めてから、山のようにあるタスクもそれに優先順位をつけ、淡々とこなせるようになったと実感している。その結果、いつの間にかタスクが片付いており、あたらなチャレンジをする時間やエネルギーの余裕もできるようになっていった。
私自身がマインドフルネスの実践をすることで、生産性の向上や、本当に価値のある選択をすることに役立っていることを感じている。
だからこそ、人々がマインドフルネスを通して仕事に本当の価値を見出し、最大の生産性を発揮してほしいと思う。
一人でも多くの働く人にこの記事が届いてくれることを心から願いたい。
参考文献
池埜聡. (2021). 位相的観点から見通すマインドフルネスの新展開: 社会正義の価値に資する方法として. 心理学評論, 64(4), 579-598.
ラス・ハリス(著)武藤崇(監訳)よくわかるACT 明日から使えるACT入門 星和書店
Shapiro, S. L., Carlson, L. E., Astin, J. A., & Freedman, B. (2006). Mechanisms of mindfulness. Journal of Clinical Psychology, 62(3), 373-386.
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