この記事の要約
- 本記事では、1日目の内容として、以下の4つの講演やセッションについて報告しています。
- Compassion Focused Therapy の基本を学ぶ
- コンパッション研究の第一人者である有光先生の研修では、講義と実践、シェアリングを通して、コンパッションについて学びました。
- 特に印象的だったのは、有光先生のコンパッション溢れる口調と、瞑想ガイドで使われる「微笑み」「ありがとう」といった温かい言葉です。
- 有光先生自身がコンパッションを体現する存在として目の前にいることで、参加者はポジティブな経験を得ることができ、実践が促進されます。
- これは瞑想アプリでは得られない、コンパッションの伝播を体験した貴重な時間でした。
- オックスフォードのマインドフルネス
- 家接先生の講演では、オックスフォード大学の最新のマインドフルネス事情について解説がありました。
- 英国では、マインドフルネスが非臨床群へ適応する方向にシフトしており、豊かな人生を送るために役立つとして、広く一般に提供する取り組み(MBCT-L)が始まっています。
- MBCT-Lでは、人々のより豊かな人生のために3つのプログラムが用意されており、最初のステップとして、従来のMBCTを簡略化し、1時間のセッションを3回行うものが提供されています。
- MBCT-Lの第一人者であるDr. Kuyken氏のインタビューでは、マインドフルな人生にはまず「目覚め」が大切という言葉が印象的でした。
- 筆者は、「目覚め」が人生にもたらしてくれるものへの「気づき」が、マインドフルネスの実践を継続していくモチベーションになると考えています。
- MBCT-LのLはLifeの頭文字であり、今を生きる人々の人生の質を上げるマインドフルネスは、筆者の理念とも合致するものです。
- 身体疾患に対するマインドフルネス
- 朴先生、山本先生による講演では、MBSR、MBCTが、がんをはじめとした身体疾患にどのような効果をもたらすのか、また実際の実践について解説がありました。
- 筆者が総合病院勤務時代に、患者にマインドフルネスを伝えられなかったことを反省する機会にもなりました。
- ポスターセッション
- 多数の刺激的な研究発表があり、特に福祉施設職員にマインドフルネス研修を行った高橋先生の発表は、筆者の今後の取り組みに示唆を与えるものでした。
- 筆者自身も現在進めている研究があり、それを発表できる形にしたいというモチベーションになりました。
日本マインドフルネス学会第11回大会1日目
2024年10月26〜27日に開催された日本マインドフルネス学会第11回大会に参加しました。
とても学びが多く、有意義な時間となった本学会、自己学習も兼ねて、まとめ記事を掲載したいと思います。
トップ画像:慶應義塾大学三田キャンパス所蔵
アルトゥール・フォルクマン作 「馬に水を飲ませるアマゾン族の女」
Compassion Focused Therapy の基本を学ぶ
昨今よく耳にするようになったコンパッションという言葉。
そのコンパッション研究の日本の第一人である有光先生の研修からスタートした。
研修は講義の合間に実践とシェアリングを挟んで進んでいく形だった。
私は知らない人とのシェアリングは緊張してしまうのだが、そこはさすがマインドフルネス学会。シェアリングのメンバーもコンパッション溢れる姿勢で話を聞いてくれたのでシェアリングがやりやすかった。
コンパッションは伝播する
印象として残ったのは有光先生のワークで用いる言葉とコンパッション溢れる口調。
「微笑み」「ありがとう」という温かい言葉が瞑想ガイドにあることが特徴であると感じた。その言葉、そして口調で自然と私も微笑んでいることに気がついた。
有光先生がまさにコンパッションを体現する存在として目の前に存在してくれた。
目の前にマインドフルネスやコンパッションを体現する人がいる。
それにより伝わるものがある。
ポジティブな経験となり、実践が促進されることもある。
それは最近流行りの瞑想アプリでは得られないものだろう。
コンパッションは伝播するというが、まさしくそれを体験したのだった。
絶対的な安心感
終盤のワークではコンパッションのある完璧な人物をイメージするというものがあった。
もちろんこれは無理のない範囲でという前提があり、人物に限定もされておらず、動物や自然の光景などでも良いとされていた。
私は最初なかなか思い浮かばなかったのだが、ふと弘法大師空海のことを思い出した。
空海が開宗した真言宗では同行二人という言葉がある。
何をするにも弘法大師がそばにいる、それを表す言葉だ。
弘法大師は今も高野山奥の院で我々のために救いの手を差し伸べてくださっている。
南無大師遍照金剛という言葉にもあるように、この世を照らす光を与えてくれているのだ。
どんな時もそばにいてくれるということほど安心を感じられるものは無いと思う。それはたとえ実態として感じられなくても心の支えとなる。
マインドフルネスやコンパッションを通して、私はこういった心の支えを届けられているだろうか。人々の幸せを願えているだろうか。
自分の実践のあり方を振り返る機会となった。
オックスフォードのマインドフルネス
午後最初の講義は家接先生のオックスフォードのマインドフルネスだった。
1時間という短い時間ではあったが、オックスフォード大学の最新のマインドフルネス事情について解説が行われた。
全ての人にマインドフルネスを MBCT-L
衝撃だったのは英国ではマインドフルネスが非臨床群へ適応する方にシフトしていること、豊かな人生を送るためにマインドフルネスが役立つとして、広く一般にマインドフルネスを提供する取り組み(MBCT-L)が始まっているということだった。
MBCT-Lでは人々のより豊かな人生のために3つのマインドフルネスプログラムが用意されており、その最初のステップは従来のMBCTを簡略化し1時間のセッションを3回で行われているとのことだった。
それぞれの回で注意の対象を選択する、あることモードに気づく、反応しがちであることに気づくということに着目しマインドフルな人生をサポートしていく。
マインドフルな人生に必要な「目覚め」
講義の最後にはオックスフォードでのMBCT-Lの第一人者であるDr. Kuyken氏のインタビューがあった。
印象的だったのは、マインドフルな人生のためには、まずは目覚めることが大切との言葉。
マインドフルに今に開かれることへの目覚め。それが豊かな人生への第一歩となることを確信されているのだろう。
私自身はさらに、その「目覚め」が人生にもたらしてくれるものへの「気づき」が、マインドフルネスの実践を継続していくモチベーションになっていくと考えている。
MBCT-LのLはLifeの頭文字。
今を生きる人々の人生の質を上げるマインドフルネスは私の理念とも合致する。日本でもMBCT-Lが広まることで、心の健康が増進されることを切に願いたい。
身体疾患に対するマインドフルネス
初日最後の講義となったのは朴先生、山本先生による身体疾患に対するマインドフルネスだった。
私は総合病院勤務時代に身体疾患領域に深く関わっており、もともと大学院の研究もがん患者を対象にしていたことからも、関心の高い領域である。
講義ではMBSR,MBCTそれぞれが、がんをはじめとした身体疾患にどう効果をもたらすのか、また実際の実践について解説が行われた。
基礎の部分の話題提供が多く、また緩和領域は私もイメージが湧くため、新たな学びというよりは復習という印象が強かったが、こういう基礎こそ大切だなと改めて実感した講義だった。
また、私が総合病院で勤務していた頃は、まだ私のマインドフルネスを伝えるスキルが十分ではなくそれを伝えられていなかった。もちろん、そのときも当時の私の最大限で患者さんと向き合っていたのだが、もし、当時の患者さんにマインドフルネスを伝えられていたらという反省の機会にもなった。
ポスターセッション
こちらも刺激的な研究が多数あり、とても勉強になったが、特に福祉施設職員にマインドフルネス研修を行った高橋先生の発表はとても興味深く、私の今後の取り組みにも示唆を与えてくれるものとなった。
私自身も現在進めている研究があるので、それを発表できる形にしていきたいというモチベーションにもなる機会となった。
開場に溢れるコンパッションと、マインドフルネスを広めていくエネルギーを感じた初日。
そのエネルギーを受け取って迎えた2日目も素晴らしい体験となりました。
2日目の振り返りはこちら↓
コメント