私たちは日々様々な感情を持ちながら生きている。
それは心地いいものから不快なものまで様々だ。
一般的に感情はその瞬間に生じる限定的なものである。
しかし、時に感情は私たちの心に残り続け、私たち個人や周囲に影響を及ぼすことがある。
過ぎ去った感情に執着すると、多くの場合それは好ましくない結果を招くことになる。
感情が引き起こす悪影響を防止するためには、まずはその感情を正しくとらえることが大切となる。
自分の感情に気づく
常に生起する感情にどれくらい気づくことができているだろうか?
私たちは、ふと気を抜くと、思考の悪循環に陥ってしまう。
感情も私たちの心を支配し、抜け出せないループの中でさらに強い感情となっていくことがある。
まずは、自分の中に生じた感情に適切に気づくこと、それが大切となる。
それでは、どのようにその感情に気づくのだろうか。
頭で感情が出てきていることに気が付くこともできるかもしれないが、それと合わせて、私たちの体の感覚を使って感情への気づきを得るというやり方も有効である。
身体感覚に注意を向ける
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)のエクササイズには嬉しいことや嫌なことに対する感情や思考、身体感覚の気づきを養うためのトレーニングがある。
そこでは、1日の中で、嬉しかったことや嫌だったことに対して、どのような体験だったか、その時の感情への気づきの有無や身体感覚について振り返りをする。
このトレーニングをしていくと、感情が動くときはどのような特徴があるのか、そのとき自分の身体感覚にどのような変化が生じるのかに対する気づきを得ることができる。
感情が揺れ動く事態が生じたときに、自分の身体感覚の気づきを得られると、いち早くそして的確にその時の感情状態を把握することに役立つ。
的確な感情を知ることのメリット
自分の感情に的確に気づくことのメリットの一つが、この記事のテーマである感情への執着が引き起こす悪影響を小さくするというものである。
それは、感情の執着により引き起こされるものへの気づきであるともいえる。
感情への執着により生まれるもの
感情に執着することで私たちの心にはさらに強い感情が生まれる。
好きという感情は「貪欲」を生み、さらに「異常な欲」に。
嫌いという感情は「怒り」を生み、さらに「異常な怒り」となっていく。
はじめは小さな感情でも、それが心の中でループすることでいつの間にかとてつもなく大きな感情となる。
そして、その感情の火は私たちや周囲のものを苦しめることに繋がる。
感情への執着により終わるもの
感情に執着することによって生じた大きな火は私たちや周囲に影響を与える。
その影響は時には関係の終焉となることもある。
その感情を適切に扱えなかったことで、あるはずだったものが失われる。
まさに、感情の業火によって焼き尽くされるのだ。
感情の業火に焼き尽くされる前に
良い感情も悪い感情も、それに執着し異常なまでに大きな感情となってしまうと、それは私たちを苦しみの沼に陥れるものとなる。
その前に、私たちは感情に気づくことが大切となる。
そして、感情はその瞬間の限定的なものであるという知恵のもと、冷静に再び今に戻る必要がある。
生きている限り感情は生じる。それを消すことはできない。
しかし、その悪影響を最小限にすることはできる。
そのためには、気づきと正しい行動を心掛けていくことが重要である。
参考文献
チャンディマ・ガンゴダウィラ長老 (著)出村佳子(訳)正見〈正しい見方:Samma Ditthi〉: ありのままに見る智慧 八正道 Sukhi Hotu
J・カバットジン(著)春木豊(訳)マインドフルネスストレス低減法 北大路書房
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