インデックス投資はとてもマインドフル:マインドフルネスと資産形成

マインドフルネス

この記事の要約

マインドフルネスとインデックス投資の類似性
・マインドフルネスとインデックス投資は、価値判断をせず淡々と同じことを繰り返す点で類似している。
・両者とも短期的な結果より長期的な成果を重視する。
・人間の認知バイアスを克服し、より客観的な視点を養う。

継続的な取り組みの重要性
・マインドフルネスとインデックス投資の両方で、一貫した取り組みが重要である。
・継続的な実践により、不必要な思考や行動から解放され、効率性が向上する。

ストレス軽減と意思決定の質向上
・マインドフルネスとインデックス投資は、ストレスを軽減し、より良い意思決定につながる。
・不必要な思考や行動からの解放により、認知的リソースが確保され、最適な意思決定が可能になる。

マインドフルネスとインデックス投資は、日々の淡々とした実践を通じて、精神的・経済的自由を目指す手段である

はじめに

本記事では、マインドフルネスの実践とインデックス投資における長期運用の考え方の類似性について考察する。両者は一見異なる分野に属するように思われるが、その根底にある価値観は驚くほど似ている。今回は、これらの類似点を詳細に分析し、両者がいかに人間の自動的な思考を克服し、長期的な利益をもたらすかを論じる。

マインドフルネスの本質

マインドフルネスとは、現在の瞬間に意図的に注意を向け、判断を差し控えながら体験を観察する心理的実践である。この実践の核心は、どのような状況下でも価値判断を行わず、ただ淡々と現在の感覚に意識を戻し続けることにある。

マインドフルネスの態度には主に以下の特徴が挙げられる。

  • 今この瞬間への集中
  • 価値判断をしない態度
  • 感情や思考へのとらわれの軽減
  • 内的体験への気づきの促進

インデックス投資の基本原理

インデックス投資とは、市場全体の動きを追随する投資手法であり、個別銘柄の選択や市場のタイミングを図ることなく、長期的に資産を運用する戦略である。この投資手法の特徴は、市場の短期的な変動に惑わされることなく、長期的な視点で投資を継続することにある。このインデックスに基づいた投資信託はインデックス・ファンドと呼ばれ、昨今の日本ではNISAの流行もあり、知名度は上がっているのではないだろうか。

インデックス投資は以下の特徴が挙げられる。

  • 市場全体への分散投資
  • 長期保有の重視
  • 頻繁な売買の回避
  • 感情的な投資判断の排除

マインドフルネスとインデックス投資の類似性

ただ淡々と価値判断をせずに

私がマインドフルネスとインデックス投資が最も似ていると感じる点は、ただ淡々と価値判断をせずに同じことを繰り返していくという点にある。
マインドフルネスは、思考や感情が生じてもそれに反応せず、ただ観察することを学ぶ。同様に、インデックス投資家は、市場の短期的な変動に一喜一憂せず、長期的な視点を保持する。

長期的視点のメリット

マインドフルネスもインデックス投資も、短期的な結果よりも長期的な成果を重視する。
人間は不快感や困難を取り除こうとし、容易に欲望を掻き立てられ誘惑されてしまう。マインドフルネスの観察する視点は、即時の欲求の充足ではなく、長期的な精神的健康と幸福を追求する。同様に、インデックスは、短期的な市場変動を無視し、長期的な資産成長に焦点を当てる。

認知バイアスの克服

マインドフルネスとインデックス投資は共に、人間の認知バイアスを克服することを目指す。
マインドフルネスは、思考や感情に対する過度の同一化を減少させ、より客観的な視点を養う。現実を正しく見る。それがマインドフルな姿勢となる。
インデックス投資は、ただ淡々と市場の相場に基づいたファンドに投資を続けるのみである。これにより過度の自信や確証バイアスなど、投資判断を歪める可能性のある心理的要因を最小化する。

取り組み続けることで未来は変わる

取り組み続けること

マインドフルネスとインデックス投資の両方において、一貫して取り組み続けるということが重要となる。マインドフルネスを瞑想などを通して習慣的に実践することで、抑うつや不安の低下、生産性や幸福感の向上だけでなく、脳の器質的な変化も生じ、不快な感情への反応が低下したり、正確な自己認識を行う機能が強化される(Treves et al.2024)。しかし、マインドフルネスの習慣を断ってしまうと、この効果は薄れていき、元に戻ってしまう。
インデックス投資も同様に、一貫して資産を積み立てていき、長期保持することが重要となる。それにより、複利の効果を最大化させ、市場のリターンを確実に得ることができる。
ただ淡々と日々取り組み続ける。それによってのみ、確実なリターンを得ることができるのだ。

不必要な思考や行動から解放される

マインドフルネスもインデックス投資も、それに取り組み続けることで不必要な思考や行動から解放され、結果として効率性を高めることに繋がる。
マインドフルネスは、過度な心配や反芻思考などの非生産的な心理的プロセスを減少させる。また実際に生産性の向上が示され、有名企業もマインドフルネスを取り入れたことで、その効果は社会に広く知られるようになった。
インデックス投資もこうした心配や反芻思考には取り合わず、頻繁な売買や市場タイミングの予測など、投資リターンを損なう可能性のある行動を避ける。
ただ淡々と無駄な動きをせずに取り組み続けることで結果的に、最高の結果を得るということになる。

ストレス軽減と意思決定の質の向上

こうした不必要な思考や行動からの解放は我々の感じるストレスの軽減にもつながる。マインドフルネスの実践は、精神面だけでなく、生活習慣病や慢性疼痛にの改善にも効果が示されている。
また、マインドフルネス瞑想の実践によりストレスが軽減することは、上記の不必要な思考や行動からの解放と相まって、タスクの処理能力を向上させ、より健全な、より望ましい意思決定に繋がる可能性が高まると考えられる。このマインドフルネスのより良い意思決定に繋がるという機能を有効に役立てているのが第3世代の認知行動療法のひとつとされるACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)だろう。
本当に価値のあるゴールを設定し、そこにコミットメントすることを念頭に置くACTの理念は、はじめに自分を受け容れる、現実を受け入れるというアクセプタンスにより余計なエネルギーを消費しないことによって、前に進むエネルギーを確保していると私は考える。
同様に、インデックス投資のアプローチは、市場の短期的変動に伴う心理的ストレスを軽減し、感情的な投資判断を避けることで、より合理的な資産運用を可能にする。Lo et al. (2005)は、金銭的損益に対する感情的反応がプラス面でもマイナス面でも強かった被験者は、トレード成績が著しく悪かったとしている。
不必要な思考や行動からの解放と心身のストレスの低減から、認知的リソースが確保され、その瞬間の最適な意思決定につなげることができる。
マインドフルネスとインデックス投資はともに、取り組み続けることでより良い未来を目指していくものといえるだろう。

まとめ

私は1年ちょっと前にお金の勉強をしたときにインデックス投資の存在を知り、それから投資を始めた。あるとき、ふとインデックス投資はマインドフルネスと似ているのではないかというアイデアが浮かび、今回それを記事としてまとめた。
こうしてじっくり考えてみるとやはり両者の共通点が明確になり、どちらも人生に役立つ知恵だなと実感している。
日々淡々と実践を行い、精神的な自由とともに、経済的な自由も目指していきたいと思う。

参考文献

Lo, A. W., Repin, D. V., & Steenbarger, B. N. (2005). Fear and greed in financial markets: A clinical study of day-traders. American Economic Review, 95(2), 352-359.
Treves, I. N., Pichappan, K., Hammoud, J., Bauer, C. C., Ehmann, S., Sacchet, M. D., & Gabrieli, J. D. (2024). The Mindful Brain: A Systematic Review of the Neural Correlates of Trait Mindfulness. Journal of Cognitive Neuroscience, 36(11), 2518-2555.


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