いつでも今この瞬間に戻れる:マインドフルネスの効果

マインドフルネス

この記事の要約

  • 現代社会において、多くの人々は、過剰な思考により脳に負担をかけている。
    • これは、脳の自動運転モードであるDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が過剰に活性化している状態である。
    • DMNの過剰な活性化は、うつや不安などの精神疾患に繋がる可能性がある。
  • マインドフルネスの実践は、DMNの働きを緩め、脳の負担を軽減する効果がある。
  • 呼吸瞑想は、マインドフルネスの実践方法の一つである。
    • 呼吸瞑想では、自分の呼吸に意識を集中することで、雑念から意識を切り離し、「今この瞬間」に意識を向ける。
  • マインドフルネスの実践により、以下のような効果が期待できる。
    • 脳の負担軽減
    • 客観的な自己認識
    • 絶対的な安心感の獲得

はじめに

マインドフルネスを日々実践し、習慣化していくことにはどのような効果があるのだろうか。
「いつでも今この瞬間に戻れる」というマインドフルネスを通して得られる感覚は、私たちの健康を高めてくれる。
どのようなメカニズムでマインドフルネスは心身の健康を高めるのだろうか。その実践についても解説したい。

脳の自動運転モードDMN

私たちは日々生きている中で、様々な思考や行動を自動化している。
それにより、私たちの日々の生活は支えられ進歩をし続けた。
これは人間が自然に発揮する能力であり優れたものであるが、これが悩みや不安に対して働くとすこし厄介なこととなる。
不快なものの解決を目指し、自動的に私たちの脳は反応してしまう。
それで問題を解決できればいいのだが、たいていは解決ができず、グルグルと同じ思考を繰り返すこととなる。
DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という脳の回路が活性化している状態だ。
このDMNが活性化している状態は抑うつや不安の高まりとも関係があることが、脳科学において、fMRIを用いた研究でも明らかになっている(1)。
DMNが過剰に活性化した状態が続くと脳に慢性的な疲労状態が生じ、うつや不安障害といった精神疾患に繋がる。
DMNは自動的な反応でそれを止めることはできない。だが、その働きを意識的に緩めることは可能である。それがマインドフルネスの実践となる。

マインドフルネスの実践(呼吸瞑想)

マインドフルネスは何も特別なことをするわけではない。
ただこの瞬案にある呼吸や身体の感覚に意識を向けていく。
その代表的なもののひとつに呼吸に注意を向ける呼吸瞑想がある。

呼吸瞑想の手順

自身の楽な姿勢をとり、呼吸の感覚に意識を向けていく。
鼻を通る空気の感覚、肺に取り込まれていく空気の感覚、呼吸の度に膨らみしぼんでいくお腹の感覚。
最も呼吸を感じやすい場所に集中していく。
このときありのままの呼吸を大切にし、無理に呼吸をコントロールしたりはしなくてもいい。
もしも注意が別のことにそれてしまったら、優しく呼吸の感覚に戻っていく。
自分を責めたり価値判断をせずにただ戻っていく。
何度注意がそれても、同じように何度も戻っていく。
それを繰り返すことでマインドフルな状態、「いつでも今この瞬間」に戻ることができる。

「いつでも今この瞬間に戻る」メリット

マインドフルネスの実践はDMNの働きを緩めることは科学的な検証でも明らかとなっている(2)。
今この瞬間を感じ、DMNを緩めることはどのような効果があるのだろうか。
まずは、自分の脳の負担を減らすことに繋がる。
知らず知らずのうちに私たちは自分の脳を疲れさせている。
その連鎖を断ち切ることは私たちの健康に非常に重要となる。
そして、意識的に自分の状態を客観視できることも挙げられる。
その場の状況に左右されずに判断ができることは、様々な場面で役に立つだろう。
さらにどんな状況でも左右されずに、価値判断のない場所に戻れるということで、絶対的な安心感が得られる。
日々、不安や恐れが襲ってきやすい現代を生きる私たちにとって、この安心感の存在はとても大きいものとなる。

DoingモードをBeingモードへ

問題を解決しようとする思考が止まらなくなり、脳を疲弊させる一連の流れをDoingモードとも言う。
Doingモードの逆の概念はBeingモードと呼ばれ、あるがままの状態、今この瞬間に存在する、今この瞬間を認識するという意味合いがある。
このDoingモードをBeingモードに切り替えていくことがマインドフルネスともいえる。
意識的にBeingモードの時間を増やすことで、思考が自動的に自分を苦しめている状態から抜け出すことができる。
それは私たちが健康に、穏やかに、安心して日々を過ごすことにも繋がっていく。

(1)Sheline YI, Price JL, Yan Z, Mintun MA. Resting-state functional MRI in depression unmasks increased connectivity between networks via the dorsal nexus. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Jun 15;107(24):11020-5. doi: 10.1073/pnas.1000446107.
(2)Panda R, Bharath RD, Upadhyay N, Mangalore S, Chennu S, Rao SL. Temporal Dynamics of the Default Mode Network Characterize Meditation-Induced Alterations in Consciousness. Front Hum Neurosci. 2016 Jul 22;10:372. doi: 10.3389/fnhum.2016.00372. 

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